酒と『地球幼年期の終わり』
アーサー・C・クラークの『地球幼年期の終わり』を読み終えました。
アーサー・C・クラークの小説を読んだのは、初めてでした。
SF小説を読んだのも30年以上ぶりだと思います。
と謂うか、小説を読む事自体、久しぶりでしたが(笑)。
ネタバレになるので、詳しい事は書きませんが、
確かにSF傑作小説と呼ばれるに相応しいスケール感があると思います。
但し、簡単に消化出来る軽量級のSF小説ではありません。
読み終わって、すんなり納得できる読者は少ないのでは無いでしょうか。
読者に安直に迎合するようなSF小説では無いと思います。
その意味では、読者を選ぶ小説かも知れません。
本格的ハードSFと言えるでしょう。
驚きの展開と結末という言い方も陳腐で使いたくありませんが、正直その通りとしか言えません。
ある種の重さと不可解さ。神秘と不条理の世界を描いた点では、純文学的要素も微妙にあるのかも知れません。
(ちなみに既に映画化されてるらしいですが、日本では公開されていないようです)
読後感を酒に喩えるなら、複雑な味わいのあるピートの効いたシングル・モルトか、
いや、むしろ毒気を放つアブサンか。
ノーズは、恍惚と絶望の入り混じったフィニッシュを予感させます。
パレットに広がる多様な登場人物達は、主旋律を際立たせる副旋律のようです。
そして苦味を引き摺った諦念のフィニッシュへ。
簡単に一言で評する事は出来ない複雑な大人の味わいだと思います。
そして、なぜかまた読みたくなる魔性の味わいかも知れません。
「時間という物は、実は人類の科学が想像していたよりはるかに複雑な物だ。
~あの記憶は過去の物では無く、未来の物だったのだ」
『地球幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク
終わり
田山 之浩